在員の税負担(Tax Equalization)について
 


会社と個人、誰が税負担するの?

近年、米国駐在員のみならずグローバルで駐在員を派遣者が急増しており、駐在員をめぐる税務は著しく変化しております。ここアメリカでは配偶者の就労が認可され、また、給与税については会社がグロス・アップし補填しているが、給与以外の個人的な不労所得など高額にわたる場合があり、雇用者として何らかの策を講じなければ会社の給与コスト増につながったり、他の駐在員また派遣元国で勤務する従業員との間で手取額に不平等感が生まれることになりかねません。人事担当者の方は駐在員の税務コンプライアンス中心で確定申告を遵守するのに追われ、個人の税負担まで目を通す時間が無いとは思いますが、会社の所得税が基本的にグロスアップ方式で会社が負担してる事実、また、負担関係が内規化されていないことをいいことに、アメリカ国内で利子所得、投資信託から配当および株式投資所得を得て、それらの所得に対する税金はすべて会社負担となっているケースもしばしば見受けられます。

どんな計算方法があるの?

そこで今回は、会社として個人所得税の負担関係について明文化するための理由と、その策についてお話申し上げます。通常、この会社と駐在員間の税負担に関する計算はTax EqualizationまたはTax Allocationと呼ばれております。

Tax Equalizationとは?

Tax Equalizationは通常、税負担の基準国を派遣元国に置き、1)海外駐在に関係ある課税年度で本人が支払った税金と、2)海外駐在した場合としなかった場合の本人負担の税額である年間ベースの仮の税(Hypothetical Tax)、を年間ベースで比較し雇用者と駐在員との間で調整する方法です。この方式は米国多国籍企業の95%以上が採用している方式ですが、総合課税方式を用いて課税年度ごとに確定申告作成の際に作成されます。その仕組みは下記の通りです。

  • 海外駐在に関する課税年度で駐在員が納付した税金

(海外駐在の前後で源泉納付した給与税(Actual Tax Withheld)+駐在期間中に会社に納付した仮の税(Estimated Hypothetical Tax Withheld)

  • 海外駐在しなかった場合の仮の税金(Actual Hypothetical Tax)

もし、1)が2)を超過した場合は駐在員へ返金、逆の場合は駐在員が会社へ支払うことになります。日本の税制は総合課税でなく源泉分離納税が基本になっているために、このTax Equalization方式を用いている在米日系企業は少ないようです。もしこの方式を採用するのであれば、日本の年末調整方式に似た形で、給与所得、社会保険料、住宅借入金特別控除、人的控除など日本で発生するする所得および控除項目を用いて“みなし税”を再計算する方法が考えられます。

Tax Allocationとは?

次のTax Allocationですが、これは派遣先国で発生する所得について会社で定めた方式により駐在員が負担する税額を決定する方式です。派遣先国、例えば米国で課税扱いとなる個人的な不労所得、配偶者の給与所得、損金参入が可能な住宅ローン利息、固定資産税、寄付金、扶養子女税額控除、外国税額控除などについて会社帰属分と駐在員帰属分を振り分ける計算方式で派遣先国の税制を基準とします。在米日系企業は、この方式を採用している場合が多く、日本で発生する持ち家の住宅ローン利息についても米国で駐在員に節税分を還元している場合も見受けられます。

 

Tax EqualizationとTax Allocationどっちがベター?

日本人駐在員の場合は、日本の税徴収の考え方が基本的に源泉分離ですので、日本で発生する所得・経費は日本の税法に沿い年末調整のように、あたかも日本で勤務継続した場合と仮定してみなし税を日本側で調整するTax Equalization方式を採用し、派遣先国で発生したものについては、会社で定めた税率を使用し会社・駐在員、それぞれの帰属額を決定するTax Allocation方式の両方を併用する方が簡単かつ明瞭といえます。派遣先国で発生する所得・経費も含めて日本側でみなし税の調整・清算する方法は二国間での情報交換を含め、税金計算にも複雑になります。しかし、海外で勤務する米国人のように派遣元国の税制が総合課税を基本としており世界中どの国に駐在しても確定申告しなければならない場合は確定申告書から必要な税務データを収集することが可能なのでTax Equalization方式が趣旨に沿っているといえます。このようなポリシーは一般的に下記の目的を遂行することになります。

  • 海外駐在しない場合の税負担と比較して、駐在した場合の税額負担に損得がなく、また、あらゆる国々へ駐在する従業員と日本に残り勤務継続する従業員との間でも税負担が公平である。
  • 派遣先国の税制に左右され本来の給与体系で保証された手取りが確保できない、また、派遣元国の税制下では所得控除にならない経費項目でも派遣先国で駐在員へ税額を還元することを回避する。

米国では駐在員の配偶者の就労が入国管理法上で認められていることもあり、今後、就労する配偶者が増加することが考えられます。また、個人資産の運用益を派遣先国で得るなど、雇用者としては駐在員に対する税務上の取り決めを作成し制度化することが急がれています。

 

TEQ対象所得国および経費の範囲

現在多くの日系企業は派遣元国で発生した所得または税務上の控除経費については、発生する国後との分けている場合が多いようです。派遣元国の日本で得た所得に付いては、ほとんどの場合で源泉徴収済みであるために、派遣先国の米国での帰属計算からは除外しているケースが多いようです。ただし、ストック・オプション所得のように所得額が大きい場合は、その所得に対し日本で勤務した場合に発生する税率を適用し国税および住民税をみなし税として追加徴収している場合もあります。また、派遣先国の米国で得た所得については、会社で決めたTEQポリシーにしたがって、駐在員に税負担を強いている会社もおおくあります。また、税務上の経費で日本で発生した住宅ローンの利息については、日本側で住宅所得控除がとれないために、米国の確定申告書を元に税額のベネフィットを個人に還元している会社もあります。

 

派遣元国の給与所得のみなし税計算・調整について

通常、海外派遣者の税負担は派遣者全員にとって共通国である派遣元国(日本)の税が基準とされ、課税年度内のどの時点で派遣になった場合でも、派遣者間で税額負担の損得が生じないNo Gain No Lossとする派遣ポリシーが最も適切で公平なものとされております。日本の税負担が基本になるということは、海外派遣しない従業員または世界中で活躍する駐在員のすべてにおいて税務上の損得が生じないということであり、そのために多くの日系企業は駐在しない日本非居住者期間の税金である“みなし税”方式を導入しております。しかし、派遣期間中のみ“みなし税”を徴収し、赴任年度または帰任年度など日本居住期間と赴任期間が同一年度で発生する場合、通年ベースで本来駐在員が負担すべき税金“みなし税”と合わせて調整されている企業はまだ少ないようです。赴任年度は居住期間は累進税率が適用されるが、給与所得控除や人的控除は一年分の控除が取れるため通年居住の場合と比較して実際の税額はかなり低くなります。しかし、赴任後に支給される賞与の日本源泉分に対し非居住者課税(20%)が徴収されるため、損得なしであると理解している会社も見受けられます。また、米国通年居住年度などの場合でも、みなし税を派遣時に一度計算したのみで、その後日本の税制の変化に合わせて“みなし税”を全く変更しない企業も多くあるようです。各国の税制は刻々と変化しており、海外へ派遣しない従業員との公平性を保持するためにも通年ベースでの調整が望まれるところです。

 

派遣先国での個人所得税帰属計算について

派遣先国の税制によっても異なりますが、ネット保証方式を導入している日系企業の場合、特に米国のように給与所得のみならず個人的所得・不労所得等はすべて課税所得となり、また、個人的経費が所得控除できる総合課税方式になっている国では、派遣者の個人的要素の相違により雇用者の税負担に増減が生じます。日本の税制は基本的に源泉分離を基本としいるため総合課税の考え方、また、日常生活でも雇用者からの手取り額をべースにしているため、特に駐在員はネット保証額をベースに経済的生活を営んでいるために所得税の個人帰属制度を導入する場合、派遣先国税制および帰属計算ポリシーの内容に関し十分な理解活動が必要といえます。派遣先国で得た所得または経費のTax Equalizationの基本的考え方は、駐在する場合と駐在しない場合の税負担の公平感が保てるポリシーを導入することです。もし、国ごとに偏ったポリシーが導入されると現地法人の税負担が大きくなったり、また、派遣元個区では同一会社の従業員であるにも関わらず各国の駐在員間で税務上の損得が発生することになります。

 

派遣先国帰属計算の税率について

海外派遣先国で個人帰属計算ポリシーを導入する際の税率ですが、個人的所得に対し駐在員が負担する税率の適用に関し下記のような例が挙げられます。

  • 個人的所得を派遣元国で得たものとみなし派遣元国の税率(居住者・非居住者)を適用する。
  • 個人的所得の有無で税額を再計算し、会社は会社の所得に対してのみ税負担し、残りは駐在員負担とする。したがって、駐在員は限界税率で税負担する。
  • 派遣先国の申告書上で算出した実行税率を適用する。
  • 内規で決定された税率を適用する。

 

 

 

 

 

 

長 所

派遣元国の税率を使用するために各国の駐在員間、また、日本で勤務する従業員との間でも公平である。

会社は個人的所得がなかったとした場合の税額を負担するために会社にとっては損得なし。

実行税率は確定申告から税額と課税所得の比率なので駐在員と会社で折半の形にあるので公平である。

内規で決定された税率次第で会社および駐在員の損得が決定されるため、各国の駐在員間で公平。

 

短 所

日本居住者または日本非居住者、いづれの税率を適用するか決定する必要がある。派遣先国の適用税率次第で会社の負担増の可能性がある。(例:退職金)

駐在員にとっては個人的所得に対して限界税率で負担額が決定されるために負担が大。

駐在員が多額(宝くじ、ギャンブル所得)の所得を得た場合、会社の負担が大きくなる。

駐在員の個人的所得次第で雇用者の負担が大きくなる可能性が大。

 

派遣先国の帰属計算の非課税枠について

会社の税額帰属計算の場合、派遣先国または派遣元国の税法に従う必要が無いために、企業ごとに非課税枠を決め、ある程度の額までは非課税とし、限度額を超過したら上記のような税率を使用し個人負担額を決定するケースが多く見受けられます。この方法は実務上、また、帰属計算書の作成費用削減のためにも有効です。特に、派遣元国ですでに源泉徴収税(例えば20%)が課せられてる場合などでは、派遣先国で課税(例えば35%)が生じたからといって、源泉税額を超過分(15%)を駐在員から徴収することは派遣先国の税制如何で駐在員の税負担が異なり公平間を欠くことになるためこのような制度は回避すべきです。多くの日系企業は派遣元国で得た所得については、特に利子、配当所得など源泉税の対象になる所得に付いては、帰属計算から除外している場合が多く見受けられます。

 

Tax Equalization Policy導入までの順序

  Tax Equalization の サンプル

  Tax Allocation の サンプル



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